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第3回東北感染制御ネットワークフォーラム 写真1

「感染制御ベーシックレクチャー」

①標準予防策・職業感染対策
 金森 肇
(東北大学大学院内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野)

標準予防策ではすべての患者が対象とされ、感染源の有無にかかわらず、汗を除く体液(血液、分泌物、排泄物など)、粘膜(眼球結膜、口腔粘膜など)、正常でない皮膚(褥瘡、熱傷など)には、感染性があるものとして対応する。その主な内容として、手指衛生(手洗い、手指消毒)、個人防護具(エプロン、マスク、ゴーグル、フェ-スシールドなど)の装着、患者に使用した器具の処理の仕方、清掃などの環境整備 、廃棄物やリネンの取り扱い、針刺し防止のための教育、安全器材の使用、咳エチケットなどが含まれている。伝播性が高い微生物による感染症と診断された(疑われた)場合には、標準予防策に加えて、感染経路別(接触、飛沫、空気)予防策を行う。すべての医療従事者が常日頃から標準予防策を遵守することが職業感染対策の観点からも重要である。針刺し・切創・体液曝露事例の対応、職員に対する予防接種などについても検討したい。

②薬剤耐性菌対策
 石橋 令臣
(東北大学大学院内科病態学講座 感染制御・検査診断学分野)

従来、ペニシリンの発見に始まる抗菌薬の使用により、我々は感染症に対する治療手段を得ることができた。しかし、一方では感染症の原因となる微生物も多くの薬剤に対する耐性がみられている。現在、地域ではメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、多剤耐性緑膿菌(MDRP)、基質拡張型βラクタマーゼ産生菌(ESBLs)など様々な薬剤耐性菌がみられ、特に医療従事者や医療器具、環境などを介した医療関連感染、日和見感染症の原因微生物となる場合がある。これらの薬剤耐性菌は発症することは稀であるものの、ひとたび感染が成立すれば治療が困難になるだけでなく医療経済面や医療施設・社会福祉施設の感染管理の観点からも大きな問題となるため非常に重要な問題である。今回は一般的な感染防護や施設内での環境整備のために必要な基本的な対策とあわせて提示いたします。

③ノロウイルス、結核
 青柳 哲史(東北大学病院検査部)

ノロウイルスは感染性腸炎といわれる嘔吐・下痢を主症状とし、ヒト-ヒトへ接触感染(一部は飛沫感染)し、院内感染の原因微生物の一つである。ノロウイルスは感染力が極めて強く、初期対応を怠れば容易にアウトブレイクを起こすため、積極的な院内感染対策が必要となる。①平時から病棟での感染性腸炎の発生状況の把握と、市中流行時には医療スタッフの健康状態も把握する。②患者の嘔吐物・下痢便および患者環境を適切な濃度の次亜塩素酸を用いて消毒する。③患者および医療スタッフに手指衛生など標準予防策の徹底と、嘔吐物・下痢便処理の際の確実な接触・飛沫感染対策が求められる。
結核の感染防止において感染経路を遮断することが重要で、①排菌源対策、②室内の陰圧化と空気清浄、③気道内吸入の予防の3点を中心とする空気感染対策が求められる。
二つの微生物の院内感染対策について、我々が経験した事例を提示しながら具体的な方法を述べたい。

④消毒と滅菌
 八田 益充(東北大学大学院 感染症診療地域連携講座)

医療技術の進歩に伴い医療器材の開発も進み、現代医療のあらゆる分野でさまざまな医療器材が使用されている。これらの医療器材は単回使用化が進む一方で、内視鏡などの精密器材や高価で精巧な手術器具など、単回使用ではなく洗浄・消毒・滅菌の過程を経て再利用されるものも医療現場では多く存在する。洗浄・消毒・滅菌について、その定義や方法を理解し、安全に正しく実践することは器材を介した感染を防止するために必要不可欠であり、安全な医療を提供するための基盤でもある。本ベーシックレクチャーでは、洗浄・消毒・滅菌に関する基本的なポイントを取り上げていきたいと思う。

⑤感染対策における情報の活用
 加來 浩器(防衛医学研究センター 情報システム部門)

施設での感染症対策には、入院患者や入居者における感染症(発熱、咳・痰等の呼吸器症状、下痢等の消化器症状)をいかに早期に捉えるかが重要である。そのためには、リンクナースや介護士からの第1報や微生物分離結果の活用という観点からサーベイランス・システムを構築する必要がある。ところが最近では、インフルエンザ、ノロウイルス、百日咳など市中で流行している感染症についてもきちんと把握しておかねばならなくなってきている。我々は、インターネットを活用することによって、様々なニュースを瞬時に捉える事が出来るようになった半面、情報が氾濫しすぎでどれを参考にしてよいか迷うことも多くなってきた。そこで本レクチャーでは、国内で発生している感染症情報のみならず、海外で流行しており国内でも問題となる可能性がある感染症について、どのように情報を収集して、感染対策に応用させるべきかなどについていくつかを例示しながら解説する。

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